慢性カルシウム不足の日本人

日本人がカルシウム不足になりやすい原因として、日本の国土は火山灰地で、カルシウムの含有量が少ない軟水の地域であることがあげられます。料理や飲用にする水はもちろん、畑などの土壌に降り注ぐ水にもカルシウムが少ないため、野菜に含まれるカルシウム分が少ないことが分かっています。
日本人の栄養充足度をみると、各種ミネラルの中でカルシウム不足が際だっており、日本人のカルシウム摂取量はここ数年、一度も必要量に達したことがありません。

カルシウムは吸収が難しいミネラルです。カルシウムはイオン化されて腸から吸収されますが、食べ物に含まれるカルシウムの大部分は、完全に分解・吸収されないまま排泄されてしまうのです。
すでにイオン化されたカルシウムであれば、分解された状態のため、20分ほどできほぼ吸収することができます。

固形や粉末のカルシウムでも同じことがいえます。まず胃で分解され、イオン化されたカルシウムが腸から吸収されます。胃が弱い方、高齢者で胃の機能が落ちてしまっている方、病気で胃を一部切除してしまっている方など、どうしてもカルシウムの吸収率が悪くなります。
胃の状態に関係なく吸収できる、イオン化されたカルシウムであれば、胃腸が弱い方でもしっかり吸収することができます。

他の食事の成分、近年では添加物などでも、吸収率が下がります。また、仮にカルシウムのイオン化がきちんと行われたとしても、そのカルシウムを血中に入れるためには、活性化されたビタミンD3があること、副甲状腺の機能が正しく働いていること等、いくつか条件を満たさなければなりません。

カルシウムの働きは、大きく分けて二つ。体を支える骨や歯に99%、残り1%は血液中にあります。
体を動かしている細胞一つ一つは、カルシウムがきちんと与えられてはじめて元気よく働くことができ、それぞれの機能を果たすことができるのです。
血液中にある1%のカルシウムが不足すると、カルシウムの必要量を保つために、貯蔵庫でもある骨からカルシウムを借りてくることになります。これこそがカルシウム不足が引き起こす、骨粗鬆症です。

さらにカルシウム不足が続くと、骨がもろくなるだけでなく、神経障害を引き起こしたり、カルシウム不足に反応して副甲状腺が異常亢進を起こし、副甲状腺ホルモンが盛んに分泌されるようになります。こうなると、腎臓障害、多尿症、高血圧症、尿毒症、食欲不振、消化不良、嘔吐、消化性潰瘍、性格変化、てんかん様発作、疲労、倦怠感、筋肉痛、頭痛、筋無力症など、さまざまな病気の恐れにつながります。

一気にカルシウムを取り込むと、体内では沢山カルシウムが入ってきたことを認識し、身体がカルシム貯金ができると思い、カルシウムの貯蔵庫である骨に吸着させようとするのです。

カルシウムをたくさん摂ると、結石ができたりしないか、と心配される人も少なくありません。結石の原因は、カルシウムがたくさん尿の中に出すぎること。この尿中に出てくるカルシウムは、血液中にカルシウムが足りなくなった結果、仕方がなく骨から溶け出された悪玉カルシウムなのです。これを「カルシウムパラドックス」と言います。
吸収の良いカルシウムを十分に摂っていれば、骨からカルシウムを溶け出す必要がなくなるため、腎臓結石はできなくなります。