疲労

疲労とは

疲労、それは誰もが感じたことがある生理現象です。 

そもそも疲労とは、「過度の肉体的および精神的活動、または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う、身体の活動能力の限界」と定義されています。

激しい運動や、長時間の労働を行った時、また過度なストレスがかかった場合など、しんどい、だるい、という感覚で自覚し、体を休めるきっかけになる、体を守るための重要なバイオアラームなのです。 

疲労によって起こる症状には、

・仕事に集中できない
・思考力が低下している
・気持ちが落ち込む
・よく眠れない
・朝、疲れが残っている
・体がだるい
・すぐ座りたくなる
・頭痛がする

などがみられます。 

疲労の種類

疲労には大きく分けて、末梢性疲労、中枢性疲労、病的疲労などがあります。 

末梢性疲労

エネルギーの枯渇や血流不全による疲労がこれにあたります。体を使った時に現れる疲労です。

以前は、運動すると蓄積される乳酸が、末梢性疲労を引き起こす疲労物質と考えられてきました。
しかし最新の研究では、運動時に糖質がエネルギーとして使われる際に乳酸が作られ、筋肉細胞のエネルギー源として再利用されることが分かってきました。

さらに動脈に乳酸濃度が高まると、脳は乳酸の取り込み量を増やすこともわかりました。
運動中、脳のエネルギー源である糖を筋肉が使ってしまうため、乳酸をエネルギー源として利用することで疲れにくい体を作っていると考えられています。

 中枢性疲労

頭を使いすぎたり、精神的な緊張状態、ストレスが要因となって起こる疲労です。
不安、怒り、恐れなど、ネガティブな感情には偏桃体が反応します。

偏桃体がストレスを感じると、うつ病になりやすい事が報告されており、うつ状態がさらにストレスとなる、負の連鎖に陥ってしまい、中枢性疲労につながります。

 病的疲労

原因は様々で、多くは風邪やインフルエンザなどの感染症にかかった時に覚える疲労です。
肝疾患や糖尿病、心臓疾患などの生活習慣病や、睡眠時無呼吸症の場合も、常に疲労感を感じているケースが多くあります。
病気が治れば、病的疲労も解消できます。

また、病気がなく、いくら休息しても疲れが取れないといった疲労は、慢性疲労症候群と呼ばれています。
末梢性疲労や、中枢性疲労の積み重ねにより、自律神経失調症の症状になることがあります。

肉体疲労と脳疲労は同じ?

「疲れた」と口にする時、体のどこが疲れているのか、意識したことはありますか?

昔は、筋肉に乳酸がたまって疲労がおこると考えられていました。
しかし、運動をする時に使われるのは筋肉ですが、それを疲労と感じるのは脳だということが分かってきました。

運動でもデスクワークでも、脳の視床下部や前帯状回の領域が疲労していることが分かっています。
この分野は、自律神経の中枢です。自律神経は、体温を調節するために汗をかく、心拍数を上げる、呼吸を早くする、などの体調管理や、ストレスやリラックス状態を調節するなど精神面の管理をするなど、交感神経と副交感神経のバランスを整えているところです。

つまり、栄養不足の疲労というより、自律神経の疲労なのです。体が疲れているのではなく、脳が疲れているのです。
体を使っても、頭を使っても、疲れているのは同じ分野なのです。

「疲労感」と「疲労」

疲労と疲労感は違います。

疲労は、体に対する物理的な負担を意味しますが、疲労感は人や状況によって変わってきます。
楽しく散歩をしながら歩く1時間と、道に迷ってあせって歩く1時間では、疲労感は全く違います。

これは人の脳の前頭葉という部分によるものです。疲れたら休む動物に過労死はありません。
人間の場合、疲労感を感じていても、ドーパミンやβ-エンドルフィンといって興奮物質が達成感を感じさせ、疲れていても疲労感を感じなくなってしまうのです。

仕事に充実感を持って夢中になっている人ほど、こうした現象が起こりやすくなります。

疲労の回復方法

疲労を回復させるには、まず睡眠。寝ている時疲労回復因子FRによる修復が行われます。
逆に睡眠不足が慢性化すると、疲労因子FFに対し、疲労回復因子FRの修復が追いつかなくなり、疲労が残って蓄積していきます。

睡眠時間と睡眠の質

長く眠らないと回復できない「ロングスリーパー」や、6時間未満の睡眠でも回復できる「ショートスリーパー」など、人により必要な睡眠時間は変わってきますが、たいていの人は毎日7時間前後眠ることで、精神や肉体の疲労を回復できるといわれています。

また、時間だけでなく、質の良い睡眠も大切。パソコンやスマホなど、脳を刺激して交感神経を刺激するようなものは、就寝前には避けましょう。
寝る前の本を読む場合は、面白くて夢中になるものではなく、難しい本を読むことがおすすめです。

また、副交感神経を優位に働かせるために、眠る約1時間前に、ぬるめのお風呂にゆっくりつかり、体を眠る準備にもっていきます。

睡眠環境も大切です。目の視神経はとても弱い光にも反応し、脳を活性化させ、眠りを浅くします。
まぶたを閉じていても、携帯を充電している時に光る小さなライトやテレビの主電源の赤い光などにも反応。
電気機器は寝室に持ち込まない、または主電源から切るなどで対応しましょう。

そうはいっても、働き盛り、子育て最中で、しっかり休息がと取れない方には、疲れに強い体をつくることや、効率の良い睡眠をおすすめしています。

体の特徴は人それぞれ。若い頃に運動してきた方、もともと体が弱い方、また生活状況によっても、変わってきます。
その方にあった疲れにくい体を作る方法を、一緒に考えていきます。

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